家族滞在と資格外活動
「家族滞在」によって親や兄弟姉妹を呼べないことはよく知られていますが、子であれば成人していても「家族滞在」によるビザ取得が問題なく可能であることを知っている方は意外にもそう多くないのが現状です。 しかし、この制度は法の趣旨とは無関係に、現実には学歴その他の要件から就労ビザ取得が難しいケースに利用されることが多く、実際に「資格外活動」許可を得て働く人は多いようです。
上記に関連してこんな事例がありました。 ある会社社長が会社経営が軌道にのってきたこともあり、韓国から奥さんを呼ぼうとした際に成人した息子も一緒にということで相談がありました。
聞くと、とにかく勉強嫌いで高校も中退、いくつかアルバイト経験はあるもののほとんど職歴というものがないことから、当初希望した自分の会社への就職による就労ビザは断念してもらい、結局家族滞在によるビザを取得しました。 親は日本語学校から始めて少なくとも日本で高卒の資格をと願ったようですが、本人は資格外活動許可をとり、ある飲食店でホール係のアルバイトを始めました。ここまではよくある話です。
それから約1年、日頃息子の話はあまりしたがらなかった社長でしたが、よほど嬉しかったのでしょう、自分の方から「今度店長に抜擢されて、給料も上がって・・・」と話がありました。
就労ビザを取り直した上での店長昇格であるならば共に喜んであげなければならないケースですが、事はそう簡単ではありません。「資格外活動」つまりアルバイト・パート状態での店長です。
日本でも近時、主に外食産業でアルバイト身分のまま店長になるケースもあり、多様化した労使関係からむしろ人件費の面で会社側にもメリットがある等、むしろ好ましいケースとして受け取られることが多いようですが、外国人の場合は異なります。
アルバイトであろうがなかろうが店長になることに何の問題もありません。それだけ一生懸命働いているということですから。しかし、外国人の「資格外活動」の場合には逆にこの事が問題になります。資格外活動で許可された時間の勤務だけで店長になれるのか?という問題です。ただでさえ営業時間が永く休日の少ない飲食店で、週28時間内の勤務だけで店長抜擢は常識的に考え難いということです。就労時間の違反が推定されるであろうし、少なくとも疑われた場合には弁明するのは至難でしょう。
店長等になることは確かに喜ばしいことではあり辞退する必要もないことですが、その場合には店長であることをあまり声高に云わないことが肝要です。また、職制上の身分がどうあろうと、「資格外活動」のままでは入管上のキャリアは形成できないということにも留意すべきです。